HAIKU (バイリンガル英語俳句) Feed

2022年8月 8日 (月)

英語俳句誤訳集《言葉の壁》

   

1910_8(写真)
日本伝統俳句協会8月のカレンダー(一部分)


8月7日は立秋です。

 


 


「立秋」の俳句は、青色文字をクリックして、「歳時記(俳誌のサロン)」の例句ご覧下さい。

 


1911(写真)
(ロンパイ夫妻の鎌倉訪問の「俳写」の一部。)
「Beigian」とあるのは「Belgian」のミスタイプで、酷い誤訳になります。

写真をクリック(タップ)拡大してご覧下さい。


 

俳句の英訳を紹介するサイトが最近増えており、知人がメールしてくれたような翻訳というよりデザイン性を高めた「俳写」と称する写真英語俳句などもあるようです。

 

220809_a

1914_b ロシア侵攻によるウクライナ戦争に思いを馳せて元EU大統領ファン・ロンパイさんが詠んだ次の俳句と翻訳が、句友が知人からもらった新聞記事に、ありました。

 

 

新聞の写真をタップ拡大してご覧下さい。

 

Cannons thunder
while summer flourishes
The sun will win

 

砲音に太陽真上日の盛り
   (星野高士訳)


 

俳句は様々な解釈が出来ます。
星野さんの翻訳は伝統俳句的名訳でしょうが、その翻訳からロンパイさんの句に込めた思いを理解するのは難しいのではないでしょうか?
翻訳する場合は作者の意図を汲んで原句の意味を忠実に訳出する方が望ましいと思っています。
ロンパイさんはイソップ寓話「北風と太陽」を念頭に、「太陽が勝つ」という表現をしたのではないでしょうか?
上記の翻訳にはそのような原句のニュアンスが無いので、原句の句意を尊重して、次のように試訳しました。

 

 

夏最中 轟く大砲 勝つ太陽

 

上記試訳は、「なつさなか とどろくたいほう かつたいよう」と、三段切れですが、原句の句意を忠実に訳出しています。

 

英語と日本語とは言語の構成が全く異なるので、リズムより句意を優先して翻訳するのが良いと思います。

 

俳句の翻訳や英語俳句が普及することは大いに歓迎すべきですが、時折気になる誤訳があります。
さまざまなタイプの誤訳がありますので、誤訳に関する記事を特集しました。

    

これまでに書いた記事は次の通りです。
青色文字のタイトルをタップ(クリック)して、ご覧下さい。

 

俳句の国際化 《言葉の壁を破るチャレンジ

 

柿食へば」の誤訳《俳句の力・言葉の壁

 

俳句をユネスコ世界無形文化遺産へ(草の根運動

 

高浜虚子の俳句「壺すみれ」をHAIKU(英語俳句)に翻訳する

 

俳聖の偉蹟を尋ね秋の伊賀(俳句と写真

 

芭蕉300句の英訳チャレンジ:「あやめ草」(21/300

 

高浜虚子の100句(100 HAIKUs of TAKAHAMA Kyoshi)(31~40

 


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2022年7月30日 (土)

「柿食へば」の誤訳《俳句の力・言葉の壁》


222730

松尾芭蕉や高浜虚子の俳句を英訳して、国際俳句協会のホームページに投稿している関係で、「英語俳句」をGoogle検索して、「英語で俳句!?詠んでみましょう!Haiku!」を読んでいると、正岡子規の俳句「柿食へば」の英訳に誤訳があるのに気付きました。
(写真をタップ拡大してご参照下さい。)

 


柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺

この俳句の「柿くへば」の助詞「ば」は「仮定」ではなく、「したところ」という意味で、「柿を食った時に丁度」という意味です。
(「俳句を楽しもう! フラワータウンカレッジ講演の要旨」参照。) 

 

NativeCampさん
英語が巧でも日本語をよく理解しなければ俳句の英訳は出来ませんよ!

どうぞ、「英語で俳句!?」の記事を速やかに見直して、

子規の有名な俳句の誤訳を訂正して下さい。

子規の代表句の一つの誤訳が世界に広まって、俳句や子規に対する誤解が生じては拙いですよ!
  
先日、「俳句HAIKU」の記事「言葉の力・俳句の力《癒し》」を書きましたが、国際俳句協会HPの「英語でわかる芭蕉の俳句」や「高浜虚子の俳句をバイリンガルで楽しもう!」を読んで頂き、「俳句の奥深さ・面白さ」や「翻訳の難しさ」をご理解頂けると幸いです。

 


国際紛争の原因の一つは「言葉の壁」です。
ロシアがウクライナ侵攻を止め、「血に染むなドニエプルてふ春の川」で述べた如く、ウクライナに春が来ることを祈っています
政治家も言葉を大切にして欲しいものですが、世界の人々が「言葉の壁と力」を理解して、俳句を通じて世界平和を実現する地道な努力をしてくれることを切望しています
この思いをSNSでシェアーして頂けると望外の喜びです。

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2022年7月14日 (木)

「言葉の力」・「俳句の力」《癒し》

     

2022年7月11日に、鎌倉八幡宮の「直会殿(なおらいでん)」で開催されたヘルマン・ファン・ロンパイEU名誉大統領と高野ムツオ日本現代詩歌文学館館長(「小熊座」主宰)の講演(俳句ユネスコ登録推進協議会国際俳句協会の共催)を拝聴しました。

 

この講演会は、「言葉の力」がテーマでしたが、両氏のお話から「俳句は癒しになる」という印象を受けました。

   

1792_haikuロンパイ氏は次の自句を引用し、「自然を観察して俳句を詠むことによって、人は謙虚になる」と言われました。

 

ロンパイさんのお考えに共感し、俳句を世界に普及する一助となればとの思いで、2017年頃から草の根運動の記事を「俳句HAIKU」に書いています

  

An old dog faithfully

plodding at his master’s side,

Growing old together.

   

忠犬や主人に沿ひて相老ひて 

       (訳:薫風士)

   

犬や猫などペットを飼っている人は沢山いますから、ロンパイさんはそのことを詠まれたのでしょうが、ひょっとして愛犬「チュヌ」をスポークス・ドッグにした「チュヌの便り」のことも小耳に挟まれたかもしれないなどと、我田引水の解釈をしています。(お笑)

  

ポーランドの旅(写真と俳句・講演のことなど)」をご覧下さい。

    

ロンパイ氏が東京新聞に投稿された俳句の試訳をしました。

ここをクリックして、記事の詳細をご覧下さい

  

A sunny wheat field

Strewn with senseless death

Hungry for peace

  

陽に煌めく麦畑

遠近(おちこち)に意味なき死

平和に飢ゑつ

  

上記の和訳は、5・7・5の定型に捉われず原句のニュアンスを訳出した薫風士の試訳です。

 

原句は「5・5・4」音節ですから、「俳句」と言えるでしょうが、この試訳は「10・10・7」のリズムですから「俳句」というより「三行詩」というべき翻訳です。

 

俳句は省略の文芸ですから、悪く言えば片言であり、その解釈は読者次第です

 

英語などの俳句を翻訳する場合は、日本語としての俳句の形式より、作者が原句に込めた思い・句意を訳出することが大切だと思います。

                  

高野氏は東日本大震災に遭い、自宅へ徒歩で帰る途次にも自然に俳句が浮かび力づけられたと、「俳人の『俳』は人に非ずと書く」と冗談気味に言われたのが印象的でしたが、この言葉と津波を詠んだ次の俳句と関連付けて深読みすると、この俳句の面白さ・深さがわかるでしょう。

  

車にも仰臥(ぎょうが)という死春の月

    (高野ムツオ)

  

1790

高野ムツオ氏の俳句はここをクリックしてご覧になれます

   

   

  

   

ここをクリック(タップ)すると、HIA 国際俳句協会HPの記事「ファンロンパイ旋風」で、ファン・ロンパイ夫妻の来日・俳句交流の状況などの写真をご覧になれます。         

  

川柳の友を偲ぶや文化の日   

ヨイクの日和平祈るや朧月

夏休み孫の成長我が癒し

大人びた言葉口真似夏休み

「ちなみに」が口癖の子風涼し

         (薫風士

   

ここをタップして、ウクライナへの応援句「ヨイクの日和平祈るや朧月」をご覧下さい

      

ここをクリック(タップ)して、「『花祭』の俳句《21世紀の宗教・世界平和を考える》」をご覧下さい。

  

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1613

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2022年3月 3日 (木)

芭蕉の俳句《ひなの家》・Haiku of Bashō “house with hina-dolls”

    

Click here to see “HAIKU of Basho” in English.

082

今日は3月3日「雛祭り」の日です。

芭蕉の俳句300句の翻訳の切っ掛けになった著書「575 THE HAIKU OF BASHO」(White & Sato)には「雛」の俳句が掲載されていません。

「奥の細道」の冒頭部分にある重要な俳句ですが、句意の解釈に諸説があり、White & Sato の両氏は翻訳に躊躇したのでしょうか? その理由はともかくとして、重要な俳句を無視できませんので、通説に従い「Haiku of Bashō・芭蕉の俳句」の番外編として書きました。  

俳句の青色文字をクリックすると、「奥の細道」の解説をご覧になれます。

      

草の戸も住替る代ぞひなの家

  (kusa-no-to-mo sumi-kawaru-yo-zo hina-no-ie)   

the house with a grass-door,

now a dwelling for

a family with hina-dolls

  

芭蕉は次の俳句も詠んでいます。 

・草の戸も住み替る世や雛の家

  (kusa-no-to-mo sumi-kawaru-yo-ya hina-no-ie)

  

(「世」を「所帯・家族」と解釈した翻訳)  

the house with a grass-door,

from family to family_

a dwelling with hina-dolls

 

または、

(「世」を「世代」と解釈した翻訳)

the house with a grass-door,

generation to generation_

a dwelling with hina-dolls

  

(注)    

助詞「ぞ」と「や」の違い、すなわち、「住み替る世ぞ」と「住み替る世や」のニュアンスの違いを上記のように訳出しました。「雛の家」とは「雛の有る家」と解釈して、「with」を用いました。

  

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2022年2月27日 (日)

Haiku of Bashō (芭蕉の俳句 172/300)《泉》

  

掬ぶより早歯にひびく泉かな

(musubu-yori haya-ha-ni-hibiku izumi-kana)

  

before scooping the water,

sooner affecting my teeth_

such a fountain!

     

 ここをクリック(タップ)すると、「575筆まか勢」・「泉」の例句をご覧になれます

」や「噴水」は「夏の季語」です。夏の俳句特集」をご覧下さい。

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Haiku of Bashō (芭蕉の俳句 171/300)《花の雲》

    

鶴の毛の黒き衣や花の雲

  (tsuru-no-ke-no kuroki-koromo-ya hana-no-kumo)

   

black feathers of a crane,

so looks your robe_

clouds of cherry blossoms

   

(注)

この俳句は蝉吟(芭蕉の門人)が伊勢に旅立つ時の銭別吟です。

」は「冬の季語」で、「花の雲」は「春の季語」ですが、この俳句の主たる季語は「花の雲」ですから、「季重なり」の問題はありません。

「so looks your robe」は「倒置法」による表現です。

  

興味があれば、

桜」・「花」の俳句と写真(特集

著名俳人の『季重なり』俳句集

をご覧下さい。

  
0708_2(写真)

カラー図説 日本大歳時記 「花」や「桜」の例句や解説の一部をご覧になれます。

      

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2022年2月26日 (土)

Haiku of Bashō (芭蕉の俳句 161~170)

    

衰ひや歯に喰ひ当てし海苔の砂

(otoroi-ya ha-ni-kuiateshi nori-no-suna)

           (161/300)

waning teeth_

noticed upon biting

a grain of sand in the laver

  

 

姥桜咲くや老後の思ひ出

(ubazakura saku-ya-rō-go-no omoi-ide)

          (162/300)

ubazakura in bloom_

causing me to think of

life in old age

  

  

世を旅に代掻く小田の行きもどり

(yo-o-tabi-ni shirokaku-oda-no iki-modori)

          (163/300)

life on journey_

like plowing for rice-planting

back and forth in small paddy fields

 

 

春や来し年や行きけん小晦日

(haru-ya-kishi toshi-ya-ikiken kotsugomori)

 

the spring has come_

has the year gone?

Kotsugomori

 

(注)

例年なら、「立春」は「大晦日」(陰暦12月30日)ですが、芭蕉は、「立春」が「小晦日」(陰暦12月29日)に当たり、例年ならまだ立春でないことを面白く俳句で表現したのでしょう。

この解釈が誤りであれば、問題点を指摘して、この俳句の正しい解釈を教えて頂けると幸甚です。

  

  

何の木の花とはしらず匂哉

(nannoki-no hana-towa-shirazu nioi-kana)

         (165/300)

what tree in bloom?

unknown to me,

so strong a scent

 

 

草臥て宿かる比や藤の花

(kutabire-te yado-karu-koro-ya fuji-no-hana)

          (167/300)

exhausted,

time to seek an inn_

wisterias in bloom

 

  

 

香に匂へうに掘る岡の梅の花

(kani-nioe uni-horu-oka-no ume-no-hana)

          (167/300)

Smell fragrant!

plum trees

on the peat-digging hill

 

  

蝶鳥の浮つき立つや花の雲

(chō-tori-no uwatsuki-tatsu-ya hana-no-kumo)

          (168/300)

butterflies and birds,

buoyant_

clouds of cherry blossoms

 

  

鶯や餅に糞する縁の先

(uguisu-ya mochi-ni-funsuru en-no-saki)

          (169/300)

a bush warbler,

droppings fallen on rice-cakes

at the edge of wooden veranda

  

  

海は晴れて比叡降り残す五月哉

(umi-wa-hare-te hiei-furi-nokosu gogatsu-kana)

          (170/300)

the sky cleared up over the lake,

still raining at the Mount Hiei_

such a May

   

(注)

「such a May」は、芭蕉が「五月かな」と「琵琶湖の5月の気象の特異性」を詠嘆したと解釈して、敢えて不定冠詞「a」をつけて、強調表現にしました。

  

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2022年2月24日 (木)

Haiku of Bashō (芭蕉の俳句 151~160)

    

月雪とのさばりけらし年の暮

(tsuki-yuki-to nosabari-kerashi toshi-no-kure)

           (151/300)

moon and snow,

fleeting_

the end of year

   

   

鞍壷に小坊主乗るや大根引

(kuratsubo-ni kobōzu-noru-ya daiko-hiki)

          (152/300)

a child playing

on a saddle-seat_

the parents pulling out radishes

   

    

木枯に岩吹きとがる杉間かな

(kogarashi-ni iwa-fuki-togaru sugima-kana)

          (153/300)

wintry blasts_

rocks look sharpened

among cedar trees

  

  

櫓の声波をうって腸氷る夜や涙

(ro-no-koe-nami-o-utte harawata-kōru yo-ya-namida)

           (154/300)

sounds of the oars slapping waves,

the cold night freezing my bowels_

tears

  

(注)

芭蕉の「涙」の実態は、「悲壮」か「悲哀」か、いずれにせよ余計な修飾はせず、「tears」と3行目を1語にして、字余りの破調の原句の韻を活かす意訳をしました。

  

  

水寒く寝入りかねたる鴎かな

(mizu-samuku neiri-kanetaru kamome-kana)

          (155/300)

the water cold_

hardly sleeping,

the seagulls  

  

油氷りともし火細き寝覚め哉

(abura-kōri tomosibi-hosoki nezame-kana)

          (156/300)

awoken

at a slim lamp-light,

the oil freezing

  

(注)

「芭蕉俳句全集」によると、この俳句は芭蕉の作か疑問視されています。

   

    

菊の後大根の外更になし

(kiku-no-nochi daikon-no-hoka sarani-nashi)

          (157/300)

after chrysanthemums,

nothing left to cherish

but radishes

  

   

冬の日や馬上に氷る影法師

(fuyu-no-hi-ya bajō-ni-kōru kagebōshi)

          (158/300)

a wintry day_

frozen on the horse back,

my shadow

  

  

旅に病で夢は枯野をかけ廻る

(tabi-ni-yande yume-wa-kareno-o kake-meguru)

           (159/300)

ill in bed on a journey,

my dreams wander around

withered fields

   

(注)ご参考までに他の翻訳を掲載します。

枯野<芭蕉の辞世句> ドナルド・キーン訳の推敲を考える」をご覧下さい。

  

(John White 訳

ill on a journey,
my dreams are wandering round
on a withered moor

 

(Donald Keen 訳)

Stricken on a journey,
My dreams go wandering round
Withered fields.

  

  

白魚や黒き目を明く法の網

(shirauo-ya Kuroki-me-o-aku nori-no-ami)

          (160/300)

the whitebaits_

opening their black eyes

in the priest’s net

   

2022年2月21日 (月)

Haiku of Bashō (芭蕉の俳句 141~150)

   

日にかかる雲やしばしの渡り鳥

(hi-ni-kakaru kumo-ya shibashi-no wataridori)

           (141/300)

the sunshine blocked by clouds_

a brief passage of

migratory birds

   

    

海くれて鴨のこゑほのかに白し

(umi-kure-te kamo-no-koe honoka-ni-shiroshi) 

           (142/300)

(翻訳A

the sea has darkened,

cries of wild ducks_

dimly white

 

 (翻訳B

the sea has darkened_

cries of wild ducks,

sounding dimly white

 

(翻訳C

the sea has darkened_

cries of wild ducks

around dimly white view

 

(注)

「白し」の主体が何か、様々な解釈があります。

(A)は原句の破調による叙情性を活かすために敢えて主語を補足せず、原句の「味わい・曖昧さ」を残しました。

(B)は「鴨の声をほの白く感じた」と解釈して翻訳しています。

(C)は「鴨の鳴き声の辺りがほの白く見えた」と解釈して翻訳しています。 

  

石山の石より白し秋の風

(ishiyama-no ishi-yori-shiroshi aki-no-kaze)

           (143/300)

at Ishiyama Temple,

whiter than the white rocks_

the autumn winds

   

(注)

原句の韻(ishi・shiroshi)と形は異なるが、英語俳句として「white」に韻を持たせて意訳し、句意を明瞭にしました。

  

  

松杉をほめてや風のかをる音

(matsu-sugi-o homete-ya-kaze-no kaoru-oto)

           (144/300)

praising pine and cedar trees,

fragrant sounds of

winds

   

   

雞の聲にしぐるゝ牛屋かな

(niwatori-no koe-ni-shigururu ushiya-kana)

          (145/300)

cries of cocks_

cattle shed

under early winter rain

  

   

白露もこぼさぬ萩のうねり哉

(shiratsuyu-mo kobosanu-hagi-no uneri-kana)

          (146/300)

white dews,

none of them dropped,

undulating bush clovers

   

   

初雪や水仙の葉のたわむまで

(hatsuyuki-ya suisen-no-ha-no tawamu-made)

          (147/300)

the first snowfall in the season,

weighing down

the narcissus leaves

  

   

初時雨猿も小蓑を欲しげなり

(hatsu-shigure saru-mo-komino-o hoshige-nari)

             (148/300)

the first winter rain_

monkeys look longing for

tiny straw cloaks

  

  

笠もなきわれを時雨るるか何と何と

(kasa-mo-naki ware-o-shigururu-ka nanto-nanto)

            (149/300)

wintry showers

against me without straw hat_

oh! dear,dear!

   

  

冬籠りまた寄りそはんこの柱

(fuyugomori mata-yorisowan kono-hashira)

             (150/300)

winter seclusion_

I’ll lie close to

this pillar

   

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2022年2月20日 (日)

Haiku of Bashō (芭蕉の俳句 131)~(140)

  

一家に遊女もねたり萩と月

(hitotsuya-ni yūjo-mo-netari hagi-to-tsuki)

              (131/300)

in a lonely inn,  

harlots also slept_

bush-clovers and the moon

  

(注)

この俳句は、「遊女を萩に例え、芭蕉を月に例えて詠んだ創作である」と深読みすると面白いと思います。

  

 

烏賊売の声まぎらはし杜宇

(ika-uri-no koe-magirawashi hototogisu)

          (132/300)

(翻訳A)

a song of little cuckoo_

confused by

cuttlefish seller’s calls

  

(翻訳B)

voices of a little cuckoo,

confusing

cuttlefish seller’s calls

   

(注)

翻訳Aは、原句は時鳥の声が烏賊売りの声に紛れていることを詠んだと解釈し、翻訳Bは時鳥が烏賊売り(遠くにいる?)の声を紛らすほど激しく鳴いていることを詠んだと深読みした翻訳です。

日本語の俳句では主語や助詞を省略すると主客を何れにでも解釈できますが、英語は論理的な言葉なので主格何れかを明確にしなければ詩として意味をなさなくなります。

 

   

鶴鳴くやその声に芭蕉破れぬべし

(tsuru-naku-ya sono-koe-ni-bashō yarenu-beshi)

            (133/300)

cries of a crane_

Japanese banana leaves could tear

with the screeching voices

  

           

    

 猪のともに吹かるる野分かな

(inoshishi-mo tomoni-fukaruru nowaki-kana)

            (134/300)

the typhoon_

wild boars also

blown down

 

  

刈りかけし田づらのつるや里の秋

(karikakeshi tazura-no-tsuruya sato-no-aki)

           (135/300)

half-harvested rice fields,

cranes_

autumn in the country  

  

   

名月や池をめぐりて夜もすがら

(meigetsu-ya ike-o-meguri-te yo-mo-sugara)

                         (136/300)

the harvest moon_

walking around the pond,

all night viewing

  

  

菊の香や庭に切れたる履の底

(kiku-no-ka-ya niwa-ni-kiretaru kutsu-no-soko)

           (137/300)

chrysanthemum scent_

in the garden,

a torn sandal sole

  

  

里古りて柿の木持たぬ家もなし

(sato-furite kakinoki-motanu ie-mo-nashi)

          (138/300)

the village aged_

none of the houses

lack a persimmon tree

 

 

風色やしどろに植ゑし庭の秋

(kazairo-ya shidoro-ni-ueshi niwa-no-aki)

          (139/300)

wind colors_

planted at random,

the autumn of the garden

   

   

虫は月下の栗を穿

(yoru-hisokani mushi-wa-gekka-no kuri-o-ugatsu)

           (140/300)

stealthily in the night,

worms bore chestnuts

under the moon

  

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2022年2月17日 (木)

Haiku of Bashō (芭蕉の俳句 121)~(130)

  

手にとらば消えんなみだぞあつき秋の霜

(te-ni-toraba kien-namida-zo atsuki-aki-no-shimo)    

           (121/300) 

(試訳A)

as if autumn frost,

it would melt upon my hand,

my hot tears_

  

(試訳B)

as if autumn frost,

upon my hand, my hot tears would melt

the hair of my deceased mother

   

(注)

(A)原句で省略された「亡母の髪」を漠然と「it」で表現しています。

(B)背景を知らなくても一応理解できるように、省略語を具体的に表現しています。

  

  

稲妻にさとらぬ人の貴さよ

(inazuma-ni satoranu-hito-no totosa-yo)

           (122/300)

How noble!

a person waking to nothing

upon lightning

 

 

 

蜘蛛何と音をなにと鳴く秋の風

(kumo-nanto ne-o-nanito-naku aki-no-kaze)

            (123/300)

spider!

how and what do you sing?

autumn breeze

 

 

朝な朝な手習ひすすむきりぎりす

(asana-asana tenarai-susumu kirigirisu)

           (124/300) 

cricket_

morning after morning

advancing practice

  

  

声すみて北斗にひびく砧哉

(koe-sumite hokuto-ni-hibiku kinuta-kana)

            (125/300) 

clear voices,

upto the Great Bear_

the sound of fulling cloth

             

 

 

露とくとく心みに浮世すゝがばや

(tsuyu-tokutoku kokoromi-ni ukiyo-susugaba-ya)

            (126/300)

glug-glug with dews,

trying to clear my heart_

the fleeting world

 

  

桟橋やいのちをからむつたかづら

(kakehashi-ya inochi-o-karamu tsuta-kazura)

            (127/300)

the bridge_

supporting life,

entangled ivy

 

 

鬼灯は実も葉も殻も紅葉哉

(hōzuki-wa mi-mo-ha-mo-kara-mo momiji-kana)

           (128/300)

lantern plant_

fruits, leaves, shells,

all in autumn color

  

  

留守のまに荒れたる神の落葉哉

(rusu-no-mani aretaru-kami-no ochiba-kana)

            (129/300)

in the absence,

dilapidated_

God’s fallen leaves

 

百歳の気色を庭の落葉哉

(momotose-no keshiki-o niwa-no ochiba-kana)

            (130/300)

century-old looks_

the fallen leaves

on the garden

  

2022年2月15日 (火)

Haiku of Bashō (芭蕉の俳句 119/300)《きりぎりす》

  

むざんやな甲の下のきりぎりす

 (muzan-yana kabuto-no-shita-no kirigirisu)

   

how pathetic!

the chirp of a cricket

under the warrior’s helmet

  

Haiku of Bashō (芭蕉の俳句 118/300)《秋の風》

  

塚も動け我が泣声は秋の風

 (tsuka-mo ugoke waga-naku-koe-wa aki-no-kaze)

  

let the mound move!

my tearful voice

is the autumn wind

   

Haiku of Bashō (芭蕉の俳句 116/300)《ほたる》

  

昼見れば首筋赤きほたる哉

 (hiru-mire-ba kubisuji-aka-ki hotaru-kana)

  

(Translation A)

 in the daylight,

 seemingly red_

the neck of a firefly

 

(Translation B)

 in the daylight,

 seemingly red-necked_

a firefly

   

  (A) は文字通りの素直な英訳です。

 (B)は英語として俳諧実を出した翻訳ですが、深読み過ぎでしょう。

  

Haiku of Bashō (芭蕉の俳句 115/300)《蛍》

    

此ほたる田ごとの月にくらべみん

 (kono-hotaru ta-goto-no tsuki-ni kurabe-min)

   

I’ll compare this firefly

with the moon reflected

in each paddy field

  

Haiku of Bashō (芭蕉の俳句 114/300)《鳰の浮巣》

   

五月雨に鳰の浮巣を見に行む

 (samidare-ni nionosu-o miniyukan) 

 

in the early summer rain,

I’ll go to see

floating grebe-nests

  

2022年2月12日 (土)

Haiku of Bashō (芭蕉の俳句 113/300)《風の薫》

   

・さざ波や風の薫りの相拍子

 (sazanami-ya kaze-no-kaori-no aibyōshi)

    

  rippling waves_

  in tune with

  the fragrance of wind

  

 ここをクリック(タップ)すると、「芭蕉db.」の解説をご覧になれます

  

Haiku of Bashō (芭蕉の俳句 112/300)《竹植る日》

  

 ・降ずとも竹植る日や蓑と笠

 (furazu-tomo take-uuru-hi-ya mino-to-kasa)

     

  without rain-fall,

 in straw conical-hat and rain-coat_

 a bamboo planting day

   

 ここをタップすると、「芭蕉db.」の句碑と解説をご覧になれます

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2022年2月 6日 (日)

Haiku of Bashō (芭蕉の俳句・111/300)<田植歌>

     

・風流の初めやおくの田植うた

 (fūryū-no hajime-ya oku-no taue-uta)

    

   hearing rice-planting songs_

   first elegance on my journey,

   deep in the north-eastern district

      

句意を明瞭にするために「hearing」を補足して上記のように翻訳し、そのままHIA 国際俳句交流協会の「英語で分かる芭蕉の俳句」にも投稿しましたが、次のように簡潔に翻訳する方がすっきりして良いと思います。

  first elegance on my journey

  deep in the north-eastern district_

  rice-planting songs

   

  この俳句の解釈の参考に、「福島民友新聞」の解説記事の一部を次のとおり抜粋させて頂きます。   

「白河の関を越えて奥州路に入ると、折しも田植え時、人々の歌う田植え歌はひなびた情緒が深く、これこそみちのくで味わう風流の第一歩です」の意

(今栄蔵「芭蕉句集」)

  

福島民友新聞解説記事の詳細は

https://www.minyu-net.com/serial/hosomichi/FM20190701-392220.php

をタップしてご覧下さい。

   

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2022年1月27日 (木)

「夢は枯野を」《芭蕉辞世句》 ドナルド・キーン訳を考える

  

5561_2

(2022年12月に、「国際俳句交流協会」の名称は「国際俳句協会」に変更されました。)

  

芭蕉の辞世句「枯野」のドナルド・キーン訳が「芭蕉終焉の地 <御堂筋>」にありました。 

  

旅に病で夢は枯野をかけ廻る 

 

Stricken on a journey,
My dreams go wandering round
Withered fields.

  

キーンさんの英訳はさすが巧ですが、「旅に病んで」と「上五」を「字余り」で表現した芭蕉の思いを反映するには、「stricken」を「ill in bed」に修正し、次のように英訳すると良いと思います。

 

この推敲案についてキーンさんのご意見を伺いたいところですが、もはや叶いません。

  

ill in bed on a journey,

my dreams wander around

withered fields

  

HIA 国際俳句交流協会のHPに掲載中の「英語で分かる芭蕉の俳句」で紹介した John White 氏は、「5-7-5音」を踏まえて次のように英訳し、5・7・5 シラブルの英訳に成功しています。

  

ill on a journey,

my dreams are wandering round

on a withered moor

  

(青色文字をタップすると、リンクした参考記事をご覧になれます。)

  

芭蕉は「平生すなわち辞世なり」と言っています。

この俳句は、前詞に「病中吟」とあり、旅の途中で病気になり、偶々この俳句が文字通り最後の辞世句になったのではないでしょうか。「笈日記」参照

    

薫風士も及ばずながら、新型コロナ・オミクロン株感染急拡大の中、「芭蕉と同じ思い」で、俳句の国際化の草の根運動をライフワークとして、ささやかな俳句ブログ「俳句HAIKU」を書いているつもりです。

 

英語俳句はまだ確立した形式がなく、作者や翻訳者がそれぞれ自由に3行で表現していますが、俳句は散文ではないので、文頭や行頭を大文字にせず、固有名詞以外は小文字で表現するのが分かりやすくて良いと思っています。

   

歳時記「枯野」の例句はここをクリック(タップ)して、ご覧になれますが、

芭蕉の俳句など、俳句の英訳に興味のある方は、ここをクリック(タップ)して、「俳句・文芸翻訳」をご覧下さい

    

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写真はタップ・拡大してご覧になれます。

 

蝸牛角振り分けよ須磨明石 

  (須磨浦公園の芭蕉句碑)

  

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(写真)

ポーランドに於ける薫風士の俳句講演風景

   

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