(改定版) 俳句談義(9): 「雛祭り」の俳句を集めました
3月3日は雛祭りである。高浜虚子の次女、星野立子(明治36年~昭和59年)の忌日(立子忌)でもある。俳句では「立子忌」を「雛の忌」や「ひひなの忌」としている人もいる。また、この日は日本ペンクラブの提案で「平和の日」とされている。
歳時記の「雛祭り」「雛人形」「雛あられ」などの句はここをクリックするとご覧になれます。
ここ(データベース)をクリックすると現代俳句協会の「雛」の句がご覧になれます。
「575筆まか勢」というブログに立子忌の句 があった。
当時、立子は女流では中村汀女、橋本多佳子、三橋鷹女とともに四Tと称された。
星野立子は次の雛の句を作っている。
・ 何といふ雛よと問はれ桃山と
・ 彼の雛の思ひ出追ふも悲しけれ
立子の俳句としては「しんしんと寒さがたのし歩みゆく」が山本健吉の「定本 現代俳句」にも句評があり印象に残っている。
高浜虚子は「雛より小さき嫁を貰ひけり」という句を作っている。
「雛より小さき嫁」とはどういうことか、「許嫁」のことかも知れないと思って、その背景を知るために虚子一族の「雛」の句をインターネットで検索してみた。残念ながら、そのような手掛かりは無かったが、目黒雅叙園の「百段雛まつり」日本最大級の雛人形が展示されているという記事があった。そのような大きな雛人形を念頭に詠んだ句なのかも知れない。
いずれにせよ目的はかなわなかったが、折角調べたので参考までに下記に記載する。
・ 雛あられ染める染粉は町で買ひ
・ 美しきぬるき炬燵や雛の間
・ 山里の雛の花は猫柳
・ 天井にとどけ雛の高御座
・ お茶うけの雛のあられに貝杓子
・ カレンダーめくりあらはる雛の日
・ 老いて尚雛の夫婦と申すべく
・ 叱られて泣きに這入るや雛の間
・ 春雷や女ばかりの雛の宿
高浜年尾 (虚子の長男・「ホトトギス」3代目主宰)の句
・ 燭台の倒れ易さよ雛かざる
・ 燭台の灯なれや雛浮び見ゆ
・ 老いゆくは淋しきものよ雛祭
・ 雛の灯を今宵の客に灯しけり
・ 雛の間の更けて淋しき畳かな
・ 飾られて仮住も亦雛の宿
・ 今日のためなほ納めずに置く雛
・ 雛の客あり雛をさめ又先に
・ 雛の忌と思ひ遥かへ心置く
・ 雛飾る娘の手伝ひもあてにして
・ 飾るより留守をあづける雛となる
・ 雛納めゐたるロビーを通りけり
・ 一筋の髪も乱さず雛納
稲畑廣太郎さん (虚子の曾孫・「ホトトギス」主宰)の句
(歳時記・雛納1)
・ 雛納せざるをちらと見て出社
・ 雛納して洋室となりにけり
(歳時記・雛納2)
・ 雛納してより吾娘の嫁ぎゆく
・ 雛納して来年を近付ける
・ 悌を重ね合せて雛納
・ 雛納君との過去も納めけり
・ 雛の目光りて納められにけり
・ たつた今過去捨て雛を納めけり
坊城中子さん (年尾の長女・「花鳥」名誉主宰)の句
坊城俊樹さん (虚子の曾孫・「花鳥」主宰)の句(句集「零」)
・ ひひなの忌雛より小さき人のゐし
・ 飾らるる雛の顔と生れ出づ
因みに、正岡子規はどのような「雛」の句を作っているかインターネットを検索したところ、まず「春星」のHPに「子規の俳句」があり、「子規の俳論俳話」というサイトがあった。しかし、ざっと見たところでは、子規の「雛」の句は「雛あらば娘あらばと思ひけり」以外には見当たらなかった。
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