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2017年7月

2017年7月31日 (月)

俳句の鑑賞 <祭り>

          

・女房は下町育ち祭好き(高浜年尾

掲句について、清水哲男氏は「増殖する俳句歳時記」において次のように述べています(抜粋)。

「なんとも挨拶に困ってしまう句だ。作者が虚子の息子だからというのではない。下町育ちは祭好き。……か、どうかは一概にいえないから困るのである。…(中略)… この句のように『そうなんだから、そうなんだ』という類の句は、見回してみるとけっこう多い。(以下省略)」  

しかし、「そう決めつけられては困るよ。」と作者(高浜年尾)はあの世で言っているかも知れません。作者は妻が祭り好きなことを理屈抜きで俳句に詠んだに過ぎないでしょう。俳句は散文と異なり所詮片言ですから、読み手次第で解釈が異なることが多いですね。

(青色文字をクリックして作者の紹介記事や俳句の詳細をご覧下さい。)

合本現代俳句歳時記(角川春樹編)の季語「祭」の項には次のとおり傍題が12あります。「夏祭」「祭礼」「宵祭」「夜宮」「神輿」「山車」「祭囃子」「祭太鼓」「祭笛」「祭衣」「祭提灯」「祭髪」

インターネット歳時記(「俳誌のsalon」)の「祭」の各ページから気の向くままに2句抜粋させて頂きます。

祭1

・復興の町に景気の祭山車 (稲畑汀子

・子が手綱引いてやさしき祭馬 (野沢しの武)

祭2

賀茂祭馬耐へがたく尿放つ (西田もとつぐ)

・父の手を振り切つてはや祭の子 (品川鈴子)

祭3

・故郷の祭を恋ひて母逝きぬ (藤村美津子)

・点滴のベッドへ遠き祭笛 (辰巳比呂史)

祭4

・この村が好きで老いたり祭笛 (梅原富子)

・教え子の祭化粧を見つめおり (小林玲子)

祭5

・水打つて祭日和となりにけり (柴田英彰)

・ふるさとに海の幸あり祭鮨 (斉藤静枝)

祭6

・祭ある地球によくぞ生まれける (鷹羽狩行

・落語家の芸賑々し祭船 (名取袿子)

祭7

・町並に古色戻りぬ祭あと (小泉三枝)

・獅子の尾を振る役たまふ祭かな (浅田光代)

祭8

神田川祭の中をながれけり (久保田万太郎)

阪神の帽子神田祭の子 (大久保白村

祭9

・下町に祭気分の漲(みなぎ)れり (稲畑廣太郎

・てのひらを味見の皿に夏祭 (小城綾子)

祭10

・祭くる百八歳の大往生 (大坪景章)

・軽トラに稚児乗せ団地祭かな (中川すみ子)

祭11

・駅を出て神田祭に揉まれけり (内藤静)

・抜路地を流れ遠音の祭笛 (中野さき江)

祭12

・星空に鼓動の余韻夏祭 (宮崎薫風)

・祭ずし嫁へ言ひつぐかくし味 (白神知恵子)

祭13

・祭太鼓腹にひびくや總踊り (井沢ミサ子)

・背伸びして募金する児の祭髪 (石田きよし)

祭14

・働きし手を見せ合うて祭かな (小嶋恵美)

・祭牛を宥めすかして御田掻く (大橋晄

祭15

・昔の名坂に残りて祭町 (今井千鶴子

・人違ひしたりされたり鉾祭 (山野美賛子)

   

俳句祭り」を開催して町の活性化を図っている地方自治体が増えているようです。俳句を世界無形文化遺産に登録しようという運動も推進されています。コーラスゲートボールなど様々な趣味がありますが、俳句は楽しくて健康に良いばかりでなく、前EU大統領の言のごとく、人心を世界平和へ導くことにも貢献できそうです。それにしても、言葉の壁・言語の壁を破り「俳句」の国際化を促進して俳句の世界無形文化遺産登録を実現することは至難でしょうね。

  

2017年7月29日 (土)

俳句の鑑賞 <溽暑(じょくしょ)・蒸し暑し>

     

7月に入って梅雨の蒸し暑さが続いています。季語「溽暑(じょくしょ)」について、森澄雄は次の通り解説しています(「カラー図説日本大歳時記」より抜粋)。

「湿度の高い蒸し暑さをいう。梅雨の終わり頃の、じっとしていても脂汗のにじむような蒸し暑さ、また土用の曇り日などの蒸し暑さも耐え難い。夏の季節風が南海上の高温多湿の空気を運んでくるのである。不快指数の高い不愉快な暑さである。」

(青色文字をクリックして解説記事などをご覧下さい。

   

・賑やかな俳句バトルや溽暑の夜

新記録更新ならず溽暑の夜

・目を見張る開票結果溽暑の夜

正論も一蹴さるる溽暑かな

都議選演説騒然街溽暑

・垣根越し白百合溢る街溽暑

政治家のまやかし憂ふ溽暑かな

    

上記の「溽暑」の俳句はチュヌの主人(薫風士)の川柳もどきの即興句です。このような即興句だけでは申し訳ないので、本格的俳句をインターネット歳時記溽暑」から下記の通り気の向くままに引用させて頂きます。     

採血の腕逆撫でらるる溽暑かな  (内田しんじ)

・度の合はぬ眼鏡のずれし溽暑かな (當麻幸子)

思考力雲散霧消溽暑かな (大橋敦子

・溽暑来ることあげもせず拉致家族 (角直指)

・暗がりの戦争動く溽暑かな (中林晴雄)

    

ちなみに、「(新版)季寄せ」(角川書店編)を見ると、富田木歩の次の俳句が一句のみ掲載されていました。

・女したしう夜半を訪ひ寄る蒸暑さ

   

川柳「平素の思い」(その4)

平成29年7月 前川郁夫氏に「平素の思い」の川柳(その4)を投稿して頂きました。

      

・忙しい人ほど早い返メール

・定年後趣味ボランティア町興し

・一つでも社会貢献町のため

・地域との関わり増えて日々多忙

・地域との関わり持とう70代

・頑張って老いの才覚何時までも

・3R(さんアール)老若男女皆やろう

・子や孫に赤字の付けを残すまい

嘘ついて大きな顔で居座るな

嘘つきの政治家次は落そうね

 

(チュヌの主人のコメント)

「3R」とはReduce、Reuse、Recycleのことで、「ごみを減らす」「繰り返し使う」「再資源化する」ことで、平成12年に循環型社会形成推進基本法に導入された運動です。(ウイキペディアhttps://ja.wikipedia.org/wiki/3R参照。)

「平素の思い」(1~3)通読版もご覧下さい。

http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/2015/09/post-6695.html参照。)

 

2017年7月23日 (日)

「星」の俳句を鑑賞しよう!

    

万緑の山並暮れて七つ星 (薫風士)    

七夕希望の星14歳 (薫風士)   

青色文字をクリックすると俳句や作者の解説などがご覧になれます。

星の俳句といえば高浜虚子の句「爛々と昼の星見え菌生え」が印象的なので、この俳句について、「『星』や『菌(きのこ)』とは何か?比喩ではないか?」と、「チュヌの便り」の「俳句談義」でさまざまな解釈を試みました。 しかし、「虚子は一俳人の話に感興を動かされて、いや感興などという生易しいものではなく、インスピレーションを得て一気に頭の中で壮大な宇宙を作り上げたのではないだろうか。」と稲畑汀子さんが述べているように、高浜虚子は「太陽」を「昼の星」と表現して「菌(きのこ)」と対比することによって悠久の大自然の営みを俳句にしたものと思います。    

  

「575筆まか勢」の「星の俳句から目についた俳句を気の向くままに抜粋し、コメントさせて頂きます。   

・むささびや杉にともれる梅雨の星 (水原秋櫻子

 鼯鼠(むささび)は冬の季語です。ウイキペディアの解説によると、「長い前足と後足との間に飛膜と呼ばれる膜があり、飛膜を広げることでグライダーのように滑空し、樹から樹へと飛び移ることができる。」また、冬と初夏の年2回発情期を迎える」とのことです。この俳句は秋桜子がムササビや梅雨の星を実際に見て詠んだものではなく、印象的な風景を空想して詠んだ俳句ではないでしょうか?季語が2つ(「ムササビ」と「梅雨」)ありますが、実際に梅雨の星と杉の木に飛ぶムササビを見たとすればものすごくラッキーなことであり、詩的な映像が印象的で「季重なり」は論外の秀句です。

・夏星に海も日暮れの音展く (飯田龍太

 「展く」は「ひらく」と読むのでしょうが、昼間は海水浴客の声で賑やかだった海の音は、夕暮れになると海本来の波音が拡がることを詠んだものでしょう。

海の日」は7月の第3月曜日ですが、「海の日」に「海開き」をする海水浴場もありますね。

・旱(ひでり)星(ぼし)われを罵るすなはち妻 (西東三鬼

 西東三鬼は何を妻にののしられたのでしょう?

・旱星流木は山忘れざる (大庭紫逢

 最近は温暖化の影響か局地的気象変動・豪雨が酷くなり、九州北部の大洪水など流木の影響で被害が増大しています。温暖化防止の努力を無視するようなひどい大統領に失望しています。

・旱星食器を鳴らす犬と石 (秋元不死男

 かんかん照りの日が沈み、星空の下で甲高い器の音をたてながら犬がガツガツ餌を食べている情景が浮かびますね。

・星涼し遊歩甲板の籐椅子に (岸風三楼

 豪華客船のクルーズで満天の星を愛でたいものです。

・父祖の地に入りて微塵の星涼し (橋本榮治)

・面舵(おもかじ)に船傾きて星涼し (高浜虚子

 (「夏の星 補遺」)

・夕雲にちらりと涼し一つ星 (正岡子規

  

2017年7月10日 (月)

「花火」の俳句を鑑賞しよう!

         

今日は七夕です。しかし、NHKニュースによると九州北部は局地豪雨の洪水・地滑りなど被害甚大でなので、星祭や句作などしているのは呑気なようで申し訳ない気がします。「七夕豪雨よ去れと祈りけり」 駄句ですが、被災者の方々へのお見舞いの一句を詠み、笹飾りに吊るしました

梅雨が明けると本格的な夏ですね。ここをクリックすると、気象庁の梅雨明け情報(速報値)などご覧になれます。)

家族で花火をしたり、花火見物に出かけたりする方が多いでしょう。神戸港開港150周年記念に当たる今年メリケンパーク沖の海上花火大会では1万5000発の花火を打ち上げるそうですが、綺麗に見えるといいですね。

ここをクリックすると、「花火カレンダー2017・全国花火大会」のサイトで各地の花火大会の情報がご覧になれます。)

   

インターネット歳時記から「花火」の俳句を気の向くままに抜粋させて頂きます。

青色文字(季語など)をクリックすると、俳句の詳細や解説記事をご覧になれます。  

花火1

花火やむあとは露けき夜也けり正岡子規

・髪の根の乾かぬままの初花火 (浦山輝代)

花火2

・空に伸ぶ花火の途の曲りつゝ (高浜虚子

・花火の中へ花火打ち込む流れ雲 (松崎鉄之介

花火3

・喚声のあとの喚声大花火 (沼口蓬風)

・花火果つ天に一つの星もなし (渡辺喜久子)

花火4

一輪の花となりたる揚花火 (山口誓子

暗がりに肩を叩かれ花火の夜 (伊藤トキノ)

花火5

・追ひ追はれ鼠花火と幼き子 (緑川啓子)

・花火の夜病院の人和みあふ (大西八洲雄)

花火6

・満天を砕く打ち止め花火かな (山田六甲)

・ぢぢばばとちちははとやや庭花火 (野沢しの武)

花火7

・鑑真の着きたる浜の大花火  (川端俊雄)

・おひらきは線香花火やいとこ会 (德田千鶴子

花火8

・花火終へ星空と海ありにけり (嶋田一歩)

・鎮魂の花火につづく闇の黙 (安原葉

  

遠花火1

・死にし人別れし人や遠花火 (鈴木真砂女

・湯浴みして髪梳く夜の遠花火 (倉本美代子)

遠花火2

・別のこと考へてゐる遠花火 (黛まどか

子のこころ読めぬとまどひ遠花火 (白井剛夫)

  

ちなみに、「575筆まか勢」には花火の俳句が無数に掲載されています。ここをクリックしてご覧下さい