俳句・HAIKU 言語の壁を破るチャレンジ(5)

英語のHAIKUを日本語の俳句に翻訳するのに、文語的にするか口語的にするかは原句の内容や翻訳者の好み次第である。しかし、一つの同じ句の中で文語と口語の両方を用いるのはよくない。

   

HIAの名句選に米国の Celia Stuart-Powles さん作の次のHAIKUと翻訳が掲載されていた。

Barely contained

in its thin velvet skin

- soft fragrant peach

熟れ桃やビロードの肌はちけそう

   

原句は「柔らかな香りのよい桃(soft fragrant peach)」を詠んだもので、その桃は「薄いビロード状の皮(thin velvet skin)」に「かろうじて包み込まれている(barely contained)」状態であるという意味であるが、直訳したのでは俳句にならない。

たとえば、文語的に翻訳するとすれば、

「ビロードの皮はじけむや熟れし桃」

となり、口語的に翻訳すれば、

ビロードの皮はじけそう桃熟れて」

などと、意訳することになる。

俳句として翻訳するには、原句に記述された「薄い」とか「柔らかな香りのよい」という形容語は全て割愛して「熟れし」の一語に集約して、読者の想像に委ねざるを得ないのである。HAIKUでは詳細な記述がなされていも、俳句では簡潔な記述にしなければならない。逆に、俳句をHAIKUに翻訳する場合は語句を補充して、英語のHAIKUとして分かりやすくする必要があることが多い。

このように、HAIKUと俳句の翻訳においては、言語間の障壁をいかに乗り越えるか、チャレンジすることに面白さがある。

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