今回は星野立子の俳句「美しき緑走れり夏料理」の翻訳にチャレンジする。
「夏料理」について、「日本大歳時記」(講談社版)は次のとおり解説している。
「夏の暑さを忘れるように、見た目に涼しげに皿に盛り、また氷片を敷いたりして料理そのものを冷たくした料理の総評。そのなかには、船料理・洗膾・水貝・冷汁なども含まれる。」
「合本 現代俳句歳時記」(角川春樹編)は次のとおり解説している。
「特定の料理を指すのではなく、夏の暑さを忘れるような見た目に涼しげで、口当たりのさっぱりとした料理の総称。冷奴、水貝、洗い、きゅうりもみ、冷麦、そうめんなど。氷片を敷いたり、ガラス器や竹の籠に盛ったりして食欲ををそそるよう、工夫を凝らした料理。」
上記の星野立子の俳句はどちらの歳時記にも掲載されているから、夏料理の代表的な句なのだろう。
大岡信は「百人百句」(講談社)でこの句について、「目に涼しく、味はさっぱりした夏料理。その外見の印象をとらえて、星野立子という俳人ののびやかな感性がそのまま句に表れている。・・・・・」(抜粋)と解説しているが、「緑走れり」が具体的に何を指すのか言及していない。しかし、「その外見の印象をとらえて」ということは「夏料理」を指していることになる。
「緑走れり」の「緑」とは、たとえば、「鮎をのせた笹の緑」「胡瓜の緑」「青紫蘇の緑」などであり、「走れり」というのは、懐石料理などとして食卓に並んでいる様子を詠んでいるのだろうか?
beautiful lines
of green run through
the summer dishes
は上記の解釈には当てはまらない。料理の品を意味する場合は、「greens」と複数にしなければならない。
「green」は「緑色」の意味であり、この英訳の「beautiful lines of green」は「緑色の美しい線」を意味するものと解釈される。そうだとすれば、夏料理の器(ガラス皿など)に「緑色の美しい線」があると言っていることになるだろう。
「緑」が料理を意味するという解釈に従う場合は、たとえば次のように英訳するとよいだろう。
beautiful greens
arranged side by side
the summer dishes
しかし、上記のように「arranged」や「laid」などを用いると意味は明瞭になるが、「走れり」という表現の面白さは反映されない。ここで、「run」とか「run side by side」とすると、文字通り「走る」意味と解釈されてナンセンスだと言われるだろうか? それとも、「run」を詩的な比喩的表現だと評価されるだろうか?
俳句は読み人次第で如何様にも解釈できるが、nativeの意見を聞きたいところである。
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