「俳句・HAIKU 言語の壁を破るチャレンジ(8)」において、HIAのホームページに記載された石田波郷の俳句(「雁やのこるものみな美しき」)の翻訳を取り上げて、「all」の単数・複数扱いの違いに言及したが、それどころかその翻訳はそもそも不適切であり、句意を訳出していないことに気づいた。
wild geese――
all that remains
beautiful
HIAホームページ掲載の上記翻訳において、「remain」は「be動詞」と同じような意味に解釈される。2行目と3行目を続けて読むと、「のこるものみな美しき」という意味ではなく、「美しいままであるもの全て」という意味になる。すなわち、「後に残していくものがすべて美しい」という句意にするには、「all that remains」ではなく、「all that remains here」とするか、「all I leave behind」とか、「all that stay behind」などとすべきところである。
例えば次のように翻訳すると、句意は訳出できるが散文的で面白くない。
wild geese――
beautiful
all that I leave behind
英語のHAIKUでは「I」を使わない方がよいと言われるので、
wild geese――
beautiful
all that are left behind
と受動態で記述すると、句意が曖昧になり不満が残る。
そこで、次のように翻訳すれば句意に最も近くなるだろう。
wild geese――
beautiful
all that stay behind
日本語は情緒的なので俳句として美しいが、その意味を訳出しようとすると英語は論理的なので散文的になりがちである。俳句と英語の俳句(HAIKU)を両立させて翻訳することは至難である。
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