今回は加藤楸邨の俳句「木の葉ふりやまずいそぐないそぐなよ」の翻訳にチャレンジする。
この俳句の英訳として、国際俳句交流協会(HIA)のホームページの「俳句・ハイク」「名句選」に次の英訳が掲載されている。
leaves falling
never-ending
yet why, so fast
現代俳句協会の現代俳句データベースにある次の解説(抜粋)は上記の英訳に近い内容である:
いったい何をそんなに急ぐ必要があるのか。もっとゆっくりしたらどうか。「いそぐないそぐなよ」と呼びかけずにはいられない楸邨の思いが滲み出ている。
この句について、山本健吉は「定本 現代俳句」において次のように解説している:
いかにも楸邨らしい句である。病床に倒れた彼は、あらゆる点で焦燥を感じていたであろう。「いそぐないそぐなよ」とは自分に言い聞かせているつぶやきであるが、落葉を急ぐ木の葉たちに言いきかせているようでもある。無慈悲な冬の季節の訪れに対して、ひそかに自分の心の準備を整えようとする気持ち―――そこに季節的に感合する気持ちを捕えたのである。もちろん「いそぐないそぐなよ」は、作者の人生態度そのものであり、何か微笑ましい感銘をさそうのである。
上記の解説を考慮すると、次のように素直に翻訳すれば原句の表現・趣旨を訳出できるだろう。
the leaves falling ceaselessly
don't hurry
don't rush