「芭蕉の俳句『古池や』の英訳を考える」において、長谷川櫂著「俳句的生活」(中公新書)の解釈を参考にして「古池や蛙飛び込む水の音」を次の通り英訳しました。
A sound of a frog
jumping into water_
the old pond
この英訳は、芭蕉が蛙の水に飛び込む音を聞いて、「鶯の初音」に感興をもよおすように「古池の蛙だな」と季節の廻りに感慨を新たにして詠んだものである、と解釈して翻訳したものです。
上記のブログを書いた当時には「Frog Poems」というサイトに41人の英訳が載っていましたが、現在はその記事は無くなっています。しかし、「Matsuo Bash�: Frog Haiku (Thirty-two Translations and One Commentary)」というサイトに32人による32個の翻訳が掲載されています。
一例を挙げると、R.H. Blythは次のように原句を文字通りに翻訳しています。
The old pond;
A frog jumps in —
The sound of the water.
この俳句についてウイキペディアに興味ある解説があります。
要するに、この俳句の意義は、「蛙の鳴き声」ではなく「蛙の飛び込む水音」に焦点をあて、取り合わせには従来の談林風の「山吹」などにせず「古池」を取り合わせにして、「わび」「さび」の句風(「蕉風」)を確立したことにあるということです。
この俳句について、芭蕉が実際に蛙の飛び込む水音を聞いたのか、水音は聞かないで創作したものなのか、議論があるようです。上記のチュヌの主人の英訳は日本の昔の田舎を知っている者にとっては極く自然な解釈として理解されると思いますが、外国人や都会人には理解しがたいかもしれません。