先輩の川柳 (2018)

   

前川淳氏の川柳久しぶりに掲載させて頂きます。   

(1)人はみな自分色したパンを焼く

(2)男から野心が消えて国痩せる

(3)夢中でたぐる青春のメモワール

(4)浮雲が乱調の美を見せている

(5)乾涸びた棚田に月は浮かばない

(6)消しゴムのカスはまことを知っている

(7)馬車馬のように走ってきたもんだ

   

今回は下記のとおり川柳を詠んだ心を敢えて書いて頂きました。

1)「人はみな・・・・・」

 人はだれしも自分に合った、自分好みのパンを焼くように、生活信条、スタイル、思考様式,性格、どれをとっても、良きにつけ悪しきにつけ皆違うもの。それでこそ、世間は変化に富み面白いというもの。

(2)「男から・・・」

 男と言っても特に若者だが、今の社会、暴力、戦争、年金、国の借金その他諸々、将来に対する明るい設計図が書けない。

どうしても無力になり、一部の例外を除き、覇気や野心がなくなっている。これでは国が弱体化するのみである。

(3)「夢中で・・・・」

 人生も老年期に達すると、体が弱り思考力も衰えてくる。それでいきおい、若く活気に溢れた青春を思い出しその回廊に浸ることも多く、それを必死に手繰ろうとするのだがなんと思い出すのに苦労のかかることよ。

(4)「浮雲が・・・」

 いつの世も、どこでも浮雲の形は一様ではない、乱れて浮いている雲の形のなんと美しいことよ。

5)「乾涸びた・・・」

 棚田の田ごとに美しい月が浮かんでいるという趣旨の有名な句があるが、今年は空梅雨で棚田も干上がってしまった。もちろん減収で農家は困るわけだが、楽しみにしていた美しい月も見られなくてわびしいことよ。

(6)「消しゴムの・・・」

 何にしろ、最初は真実を吐露すべく書き始める。ところが途中でこんなことを書くとまずいなと邪な気になり、消しゴムの出番となる。というわけで、消しゴムのカスこそ真、真実を知っているのである。

(7)「馬車馬の・・・」

 特に現役時代は、自分のため、家族のため、会社のため、はたまた社会のためがむしゃらにまさに馬車馬のように働いてきたもんだ。それが定年後の今、満足感に耽るとともに果たしてこれで良かったのかと、ふと、そんな感慨に浸ることもある。

 

チュヌの主人のパソコンが壊れたり、高浜虚子の俳句(100句)の英訳を国際俳句交流協会のHPに5回シリーズで投稿するなど、バタバタしている間に投稿のメールを頂いていたのに気がつかず、掲載が大変遅れて失礼してしまいました。

 

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