政治談議(1)                「安保法制」を改悪するために投票したのではない!

                           

先日NHK日曜討論安全保障関連法案について」を視聴し、自民党高村副総裁の発言などを聞いて、いたたまれない気になって「政治談議」を書き始めた。

(青色文字をクリックして関連記事や解説をご参照下さい。)

衆院憲法審査会で憲法学者三氏(長谷部恭男笹田栄司小林節安全保障関連法案を『違憲』と指摘したことに関し、高村氏は次のような発言をしている。

「学者の言うことを聞いていたら日米安全保障自衛隊もない。日本の平和と安全はなかった」

しかし、高村氏の発言「学者の言うとおりなら平和なかったは的を射ない暴論である。日米安全保障や自衛隊の存在も抑止力になったであろう。だが、何よりも大きな抑止力は「平和憲法を堅持して武力を行使しない日本を外国が攻撃したり日本人を殺害することには大義がなく、国際的な支持を得られない」ということだと思う。

現在の「平和憲法」の下で、国際貿易や文化交流を続け、相互理解と相互依存性を深めることこそ抑止力になるだろう。

    

高村氏は「憲法の番人は最高裁判所であり、憲法学者ではない」「現在国会で審議をしている平和安全法制における集団的自衛権の行使容認は合憲である」と主張している。

その主張の根拠として砂川事件最高裁判決の法理に言及しているが、それは法理の曲解で的を射ていない。

最高裁は「砂川事件の判決」をしたのであって、「安全保障関連法案」の合憲性を審理したわけではない。高村氏を尊敬していたが、こんな単純な法理のイロハが分からないか、或は、分かっていながら敢えて強辯する政治家だ、と知って非常に落胆している。

法理そのものは単純でも、確認のためには砂川事件の最高裁判決の全文を参照して詳細な説明を要する。煩雑になるからこの本文では触れない。

下記の青色文字をクリックしてそのサイトの記事をご参照下さい。

憲法学者が見た審査会浦田一郎・明大教授、駒村圭吾・慶大教授)

集団的自衛権と憲法の関係は_27歳の弁護士がわかりやすく解説」 

伊藤健弁護士

安保関連法案の撤回を求める長谷部氏と小林氏の発言詳報

    

高村氏は、「実際の政策は、憲法の番人たる最高裁判所の判決で示した法理のもと、内閣と国会に委ねられている」、「『新安保法制』は合憲であり、国会の多数を占める与党が決定できる」という論理を展開している。

しかし、昨年の衆議院選挙で与党が多数を獲得したのは、現在国会で審議中の「安全保障関連法案」が今国会で成立することを国民が期待したからではない。

そうであるなら高村氏の主張も一理あるが、事実はそうでない。

デフレ脱却・景気回復の経済政策を期待して、「道半ば」と言われたアベノミクスの成り行きを見ようと、大部分の選挙民が政権の安定性を求めて衆院選の投票をしたのだと思う。

昨年の選挙運動で、「衆議院選挙の大義は『消費税再増税の先送り』について国民の信を問うことにある」という趣旨のことを安倍さんが盛んに言っていたことが印象に残っている。

国民の大多数がそういう印象を持っているのではなかろうか?

安倍総理はじめ与党政治家が衆院選の選挙運動で言っていたことに照らし、騙されたような釈然としない気持ちを抱いている国民が多いのではなかろうか?

この際、このような国民意識を確認することは極めて重要である。

NHKや新聞社などマスメディアで世論調査をして、昨年の衆議院選挙で投票者が何を期待して投票したのか、「新安保法制の確立を期待して投票したのか?」意識調査をしてほしいものである。

TV Asahiの世論調査によると、安全保障関連法案について「反対45%、わからない31%、賛成24%」である。

「反対」と「わからない」の合計は「憲法改正」や「法律案の衆議院優越可決権」に必要な比率:「3分の2」を上回る76%である。

    

憲法改正について、憲法96条に次の規定がある。

「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」

  

また、憲法59条2項には「衆議院の優越」について次の規定がある。

「衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。」

     

 安全保障関連法案を合憲とする学者の名前が産経新聞記事に公表されているが、曖昧な言葉を使って正論らしく発言している政治家の発言もある。合憲と判断している学者の論拠も是非公表して頂きたい。

賛成・反対それぞれの立場の学者の公開討論をしてもらえると、非常に面白いと思うが、それが無理なら、論文の紹介をしてほしいものでる。

      

産経新聞の独占インタビュー記事を見ると、安倍総理は誰も反対しないような良いことを言っている。

だが、安全保障関連法案の違憲性が問題になっている現状で、そのまま強行採決すると、「良い結果」にならないだろう。

安倍さんには是非そのことを気づいてほしい。安倍さんは取巻き連中に裸の王様にされて気付かないのだろうか? 

安全保障関連法案を強行採決すれば国民の理解を得られず、外国の理解も得ることが出来ないだろう。特に、アジア諸国の理解を得ることができなければ、中国や韓国などの世論を無視することが出来ない米国の理解も得ることが難しくなるのではないか。

米国はイラク戦争9.11多発テロのように、複雑な宗教・人種がらみの中東問題に手を焼いている。日本が米国の紛争やテロに巻き込まれたら大変である。後藤健二さんなどの殺害でも明らかだが、テロリストには正論は通じない。日本にテロが及ぶ場合の対策を準備しておくことこそ先決ではないか?

安全保障関連法案を国民の理解を得ず強行採決することは決して国民の願っている平和に寄与することにならないだろう。

このことはいくら強調しても強調しきれない。

安全保障関連法案に反対している政党や学者などに対して、論理的根拠も示さずに「国益に反する」というようなブログ記事があるが、戦前・戦中よく使われた「非国民」というレッテル、或はそれに対抗する「レッテル貼り」を政治家がすることは厳に慎んでもらいたい

賛成・反対いずれの立場にせよ、意見の違う者に対して「国益に反する発言」だとか、「国益に反する者」「売国奴」など、相手の発言を封じ込めるためのレッテル貼をしてはならない。「和を大切に」し、「空気を読むことを良し」とし、「発言を遠慮する」など、礼儀正しい国民性がマイナスに機能し、戦前と同じような過ちを繰り返すことになるのではないか、と心配している。

ここまで書いたところで、「安保関連法案:長谷部と小林両氏、政府・与党を厳しく批判」という毎日新聞記事を見た。

「6月4日の衆院憲法審査会で、自民党が推薦した長谷部恭男・早稲田大大学院教授ら憲法学者3人が集団的自衛権の行使容認を含む安全保障関連法案を『憲法違反』と明言した。その後、自民党幹部からは『憲法学者はどうしても(憲法)9条2項の字面に拘泥する』『学者の言う通りにしていたら、自衛隊も日米安全保障条約もない。平和と安全が保たれたか極めて疑わしい』といった発言が飛び出し、安保法案を巡る議論は加熱している。憲法審査会で参考人として意見を述べた長谷部氏と小林節・慶応大名誉教授が15日、日本記者クラブで会見を開いた。「違憲」を主張する両氏は果たして「現実を知らない」学者なのか。その発言の真意に迫った。【石戸諭/デジタル報道センター】(詳細はここをクリックしてご覧下さい。)

   

6月15日の毎日新聞記事によると、

「衆院平和安全法制特別委員会は15日、一般質疑を行った。中谷元(げん)防衛相は、1959年の最高裁の砂川事件判決が集団的自衛権の行使容認を合憲だと判断する根拠になるかどうかについて『直接の根拠としているわけではない』と明言した。自民党の高村正彦副総裁は11日の衆院憲法審査会で『最高裁が下した判決こそ、よって立つべき法理』と述べており、野党は政府・与党内の発言の食い違いを追及する構えだ。」

とある。

     

俳句談義18「政治家と俳句」で述べたように、「真の安全保障は何か」、「自衛力は備えても使用せずに済む戦略は何か」、与党議員、特に安全保障関連法案の強行採決を意図している議員、にはしっかり考えるようお願いしたい。

安倍さん! 安全保障関連法案を夏までに成立させなくても賢明なオバマさんは理解してくれますよ!

少なくとも、「安全保障関連法案に賛成すべきか、反対すべきか、分からない」と言っている国民によく考える期間を与えてほしい。

愛する日本の首相を裸の王様にして、国民が不幸になってはたまらない」との思いでこのブログを書いている。

政府が公約をどのように実行しているか、情報をシェアーして、皆でしっかりフォローしよう!

            

        

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