「秋風」について日本大歳時記(講談社)の解説をみると、「秋風は秋風一般に言い、またとくに秋の初風を言う場合もあり、晩秋の身にしむような蕭颯たる風を言う場合もある。『色無き風』は秋の風をいう。中国の五行思想で秋に白を配し、秋を素秋、秋風のことを素風といったのを歌語になおしたもので『色なき』とは華やかな色の無いこと、つまり、無色透明の中に身にしむような秋風の寂寥感をいったものである。」(抜粋)とある。そこで愛犬「チュヌ」の散歩をしながら一句口遊んだ。
・旧りし街色なき風を老犬と
・大夕日色なき風の町を染め
インターネット歳時記(俳誌のSalon)を見ると、「秋風」「秋の風」「色なき風」「金風」など例句が約1900句ある。各ページの冒頭句などを下記に掲載させて頂く。
(青色の文字をクリックすると俳句の詳細や解説がご覧になれます。)
秋風やそのつもりなくまた眠り (久保田万太郎)
藷畑にただ秋風と潮騒と (山本健吉)
秋風や模様のちがふ皿二つ (原石鼎)
吹きおこる秋風鶴をあゆましむ (石田波郷)
秋風や水より淡き魚のひれ (三橋鷹女)
秋風や眼中のもの皆俳句 (高浜虚子)
秋風の吹きくる方へ帰るなり (前田普羅)
身にしみて大根からし秋の風 (芭蕉)
かな釘のやうな手足を秋の風 (一茶)
人の國の牛馬淋しや秋の風 (飯田蛇笏)
線香の折鶴つたふ秋の風 (高島茂)
一日を終へたる紫煙秋の風 (田中信行)
色なき風音なき風や鈴が森 (長谷部朝子)
乙女像色なき風に胸を張り (塩路五郎)
増殖する俳句歳時記の「季語が秋風の句」に上記の俳句のいくつかの解説があり、他にも芭蕉の俳句「物言えば唇寂し秋の風」など興味ある俳句と解説がある。
正岡子規の俳句「秋風や囲いもなしに興福寺」について、「しばやんの日々 野球の殿堂入りした正岡子規の野球への愛情と奈良の旅行」という興味あるブログ記事があった。