俳句の国際化 《嵐雪の辞世句について》
(P.S. 2022.12.2)
HIA 「国際俳句交流協会」の名称が「国際俳句協会」に変更されました。
(2019.1.13の記事)
芭蕉の高弟である服部嵐雪の辞世句とされる下記俳句のドイツ語訳について不審に思ったドイツの「俳句メル友」から、新年早々に、この俳句の解釈について問い合わせのメールを受信しました。
・一葉散る咄ひとはちる風の上
この俳句のドイツ語訳は次のとおり英訳してありました。
A single leaf falling
sheer lunacy!
A single leaf drifting away with the wind
そして、句友の英訳は次のとおりドイツ人らしい合理的な翻訳です。
Loosen from the tree
the helpless leaf
is drifting away on snowflakes
「sheer lunacy」は「愚行」とか「まったく馬鹿げたこと」と言うような意味です。(研究社大英和辞典)
「咄」は「叱る声」や「事の意外さに驚き怪しむ声」です。(広辞苑参照)
そこで、「咄」は座禅に使われる「喝」と同じような一種の擬音であること、この俳句の「葉」は「人間」の比喩と捉えるのが良いと思う旨説明し、次のとおり筆者独自の大胆な意訳を連絡したところ、「amazing!」と感嘆した旨の返信が来ました。
man dies as a leaf falls_
Basho has passed away,
now, me too.
因みに、R. H. Blyth 氏は A History of Haiku (Volume One) において、「この辞世句は美しいが、何か nerveless である」と付記して、次のように文字どおり英訳しています。
A leaf falls,
Totsu! Another leaf falls,
Carried by the wind.
「nerveless」は研究社大英和辞典によると「弱弱しい」とか「冷静な」という意味ですが、Blyth はどちらの意味を指しているのでしょうか?
Stephen Addiss 氏は The Art of Haiku において、「『咄』は禅の叫び声である」と付記して、次のとおり英訳しています。
a leaf falls
Totsu! a leaf falls_
riding the wind
上記2氏の英訳は「風に運ばれる」とか「風に乗る」と英訳していますが、嵐雪は「風の上」と表現して「昇天」を暗示したのではないでしょうか?
さらに、「咄」と擬音で注意を喚起して、「ひとはちる」と「ひらがな」を用いて「人は散る」と読ませることを意図していたのではないでしょうか?
穿ちすぎでしょうが、高浜虚子は嵐雪の辞世句が潜在意識にあって「春の山屍を埋めて空しかり」に同じように「ひらがな」を用いる手法を使ったのかもしれません。
英語は論理的な言葉ですから日本語ほど連想を伴いません。比喩的な俳句は文字通りの英訳と意図された比喩の意訳を併用すると日本語の原句にある暗喩のニュアンスが理解されやすいと思っています。
国際俳句交流協会HP掲載の「高浜虚子の俳句をバイリンガルで楽しもう!」をご覧下さい。
俳句の翻訳に興味があれば、「俳聖の偉蹟を尋ね秋の伊賀(俳句と写真)」や「俳句の国際化 <言葉の壁を破るチャレンジ>」をご覧下さい。
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「新年・正月」の俳句特集
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投稿: | 2022年12月12日 (月) 22時05分
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投稿: | 2022年6月11日 (土) 17時38分
伊賀上野の芭蕉翁記念館に展示された芭蕉の俳句「五月雨を集めて早し最上川」の 翻訳は誤訳だと思います。
ご確認頂ければ幸いです。
「俳聖の偉蹟を尋ね秋の伊賀(俳句と写真)」
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投稿: | 2021年11月24日 (水) 08時26分
<提言>「平和の俳句」月間(「俳句の日」から「子規忌」)
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川柳と俳句(先輩の句集を拝読して思うこと)
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(薫風士)
投稿: | 2021年9月20日 (月) 22時23分
トランプ米国大統領の「アメリカファースト」(実は「ミーファースト」か?)の政権がようやく終ることになりホットしていますが、次期大統領が余程しっかりした政治をしなければ、4年後が更に恐ろしいことになるでしょう。
「まやかしの仕方」は安倍政権から引き継がないで、「安倍・トランプ」の日米関係に捉われず、「菅・バイデン」の日米新体制で「透明性」と「言葉の重み」を尊重し、政治に対する国民の信頼を回復して下さい。
・大寒やコロナ禍憂ふポピュリズム
俳句 HAIKU: 大寒の俳句(コロナ禍・国際同盟に思うこと)
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投稿: | 2021年1月15日 (金) 14時21分
国際俳句交流協会HPの記事「英語で分かる芭蕉の俳句」
https://www.haiku-hia.com/about_haiku/basho300/archives/300-01.html
をご覧下さい。
投稿: | 2021年1月13日 (水) 11時20分
芭蕉や高浜虚子の俳句などを英訳して掲載しています。
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/generaltranslation/
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投稿: 木下 聰 | 2019年6月11日 (火) 13時42分
新元号は初めて万葉集を出典にして「令和」と決定されました。
世界平和への思いを込めて「令和」の俳句をブログにしました。
「新元号祝ひ『花見』の俳句詠む」
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/2019/04/post-e976.html
をご一読下さい。
投稿: 木下 聰 | 2019年4月25日 (木) 10時35分
Click the following URL to see "Farewell haiku of Ransetsu"
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/farewell-haiku-of-ransetsu.html
投稿: Satoshi Kinoshita | 2019年2月11日 (月) 23時39分