政治談義(11): 国民の不安          <安保法制と徴兵制>

                       

与党が世論を無視して「安保法制関連法案」を強行採決したやり方を見て、「強引な安倍政権が続けば徴兵制になる」と不安を抱いている国民が多いのではなかろうか?

     

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自民党の憲法改正案では「自衛隊」が「国防軍」になり、普通に戦争が出来るようになっている。

現在自衛隊への就職希望者が多いのは平和憲法で自衛隊の活動が制限され、もっぱら自衛のための専守防衛と災害復旧など、戦闘ではない活動だからである。安保法制関連法が制定されると、自衛隊への入隊希望者が激減し、少子化で若者が減少し、徴兵制にせざるを得なくなるだろう。そのような不幸な事態は避けなければならない。

      

内閣官房のホームページに「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について』の一問一答 」(35問)がある。

    

徴兵制」については次の通り記載されている。

【問16】 今回、集団的自衛権に関して憲法解釈の変更をしたのだから、徴兵制も同様に、憲法解釈を変更して導入する可能性があるのではないか?

【答】 徴兵制は、平時であると有事であるとを問わず、憲法第13条(個人の尊重・幸福追求権等)、第18条(苦役からの自由等)などの規定の趣旨から見て許容されるものではなく、解釈変更の余地はありません。

   

「解釈変更の余地はありません」という上記の回答を国民の何パーセントが信じるだろうか?

    

憲法第13条には、「すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とある。

     

政治談議(9)」で述べたように、安倍総理や取巻きの弁護士政治家(高村副総裁稲田政調会長など)は砂川事件最高裁判決を曲解して、「安保関連法案が憲法9条に違反しない」と「まやかし」の説明をしている。それと同じ様に、「公共の福祉に反しない限り」が曲解され、国民の権利が矮小化され、状況によっては徴兵制が閣議決定される可能性を否定できない。

安保法制に関する閣議決定に懲りて、国民の大多数は政府の説明を鵜呑みにしないだろう。

      

政府は「安保法制関連法案」を閣議決定し、憲法に違反する可能性の大きい「安保法制関連法案」を「砂川事件」に関する最高裁判決曲解することによって合憲だと主張し、世論の反対を無視して強行採決をしているから、国民が不安を抱くのは当然である。

       

「安保法制関連法案」の閣議決定について、政府は「今回の閣議決定は、我が国を取り巻く安全保障環境がますます厳しさを増す中、我が国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るため、すなわち我が国を防衛するために、やむを得ない自衛の措置として、必要最小限の武力の行使を認めるものです。」と言っている。

    

この説明の「武力の行使」を「徴兵制」に置き換えると、次のように尤もらしい説明になるのではなかろうか?

   

「今回の閣議決定は、我が国を取り巻く安全保障環境がますます厳しさを増す中、我が国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るため、すなわち我が国を防衛するために、やむを得ない自衛の措置として、公共の福祉に鑑み、必要最小限の『徴兵制』を認めるものです。」   

     

安倍総理は、自分の主張の根拠に何かにつけてご都合主義のつまみ食いをしている。安保法制関連法案の全文を見て全貌を把握しなければ、上記の35問の説明だけでは安心できない。法案の全文を通読できるようにして政府のインターネットのサイトに掲載すべきだ。与党は「丁寧な説明」をすると何度も繰り返すばかりで、法案の条文を国民のために読みやすくする配慮をしないのは全く納得できない

政治家や評論家、マスコミなど、誰もこの点を指摘しないのが不思議だ。

    

国民は法案の全文を知れば、「徴兵制についても同じことが繰り返される」という心配や安保法制関連法案に対する反対をしなくなるかもしれない!

それとも、「安保法制関連法案を白紙に戻し、再検討せよ」という声が一層高まるか?!

政府は後者の事態になることを恐れているのだろうか?

    

参議院では与党の質問時間が多いとのことである。「お題目」の繰り返しでない、文字通り「丁寧な説明」を期待している。

「初めに結論ありき」でなく、法案の条文を参照して具体的な事例について政策論をすることによって、政治談義(10)で述べたように「良識の府」に相応しい真摯な議論をしてほしいものである。

        

余談だが、毎日新聞朝日新聞の記事によると、「2018年度以降、小中学校の道徳が正式な教科に格上げされるのに向け、文科省が作成した教科書検定の基準案を文部科学相の諮問機関『教科用図書検定調査審議会』が了承した」とのことである。

「問題解決や体験を重視するなど、『考える道徳教育』を促す内容」になっているらしい。「一方的な価値観の押しつけでなく、子どもが自分で考える授業になるよう、教材の面から後押しする狙いがある。」とのこと、結構なことである。

また、改訂された道徳の指導要領には、「『正直、誠実』『家族愛』などのキーワードを設けた。基準案でも指導要領に沿い、『伝統と文化』や『先人の伝記』などを必ず盛り込むよう求めている。」とのことである。

    

安倍総理以下与党の議員には、最高裁判決の「まやかし」の解釈をせず、先ず自らが率先して、国民に対して総理大臣や国会議員として『正直、誠実』を実践し、模範を示してほしい。

              

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