俳句・HAIKU 言語の壁を破るチャレンジ(11)

 

今回は正岡子規の句「雷晴れて一樹の夕日蝉の声」の翻訳を取り上げる。

この句の英訳として、国際俳句交流協会HIAのホームページ「俳句・ハイク」「名句選」の「愛好10コー・ヴァン・デン・フーヴェル:抄出には次の翻訳が掲載されている。 

after the thunder-shower
one tree in evening sunlight
a cicada's cry
 

子規はこの句で一匹の「蝉の声」を聞いたので「蟬時雨」と言わなかったのだろうか? 

一般に「蟬の鳴き声」は「蟬時雨」という季語があるように賑やかなことが多いが、雨上がりに一斉に蝉が鳴きだしたのを聞いた記憶からすると、この句の蟬の声は複数として英訳してみたい。

一樹の夕日」は「一樹に夕日が差している」ことを詠んだのだろうか? それとも、「夕日に一樹が黒く見える」状態を詠んだのだろうか?

詩心よりも、このような実際的な現象につい拘るのは長年ビジネスレターや契約書、特許明細書などの翻訳をしてきたせいだろう。しかし、子規は蕉風に対抗して写生を唱道したのだから、子規が実際に見たであろう風景を自分なりにイメージして、次のように試訳する。

an evening sunlit tree

after the thunder-shower_

singing of cicadas

子規は上記の翻訳を何と思うだろうか?

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