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2019年5月28日 (火)

芭蕉300句: 言葉の壁を破る英訳チャレンジ(5) <ほととぎ朱>

  

Basho’s Haiku in English   (6/300)

  

・岩躑躅染る泪やほととぎ朱 (6)

  iwatsutsuji somuru namidaya hototogisu

    

 (A) Translation by John White & Kemmyo Taira Sato

 

  rock azaleas

  so it seems, have been dyed red

  by the cuckoos’ tears

  

 

(B) Translation by L.P. Lovee

 

the rock azalea

  seems to be dyed with the tears of

  a cuckoo

 

(C) Translation by L.P. Lovee

 

  the tears 

  dyed with the rock azaleas_

  a cuckoo

         

ほととぎす」には「杜鵑」「時鳥」「子規」など色々の当て字があります。 一般的に「ほととぎす」の詩歌は「鳴き声」に焦点を当てますが、芭蕉は「ほととぎ朱」と書き、色に焦点を当て新鮮味を出したものでしょう。

「血の涙」という言葉もありますが、評伝・正岡子規(柴田宵曲著)によると、正岡子規は俳号「子規」の元になった五言絶句で「杜鵑が血を吐いて鳴く」という趣旨のことを詠んでいます。

  

芭蕉はこの「ほととぎ朱」の俳句を詠んだ時に、「客観写生」と「主観的表現」を意識していたのでしょうか?

実態的解釈はともかくとして、(B)は「主観的表現」であり、(C)は客観写生」と解釈して翻訳しています。

 

高浜虚子は、「俳句への道」(青空文庫)において、

「客観写生ということに努めて居ると、その客観描写をとおして主観が浸透して出て来る。作者の主観は隠そうとしても隠すことが出来ないのであって客観写生の技倆が進むにつれて主観が頭をもたげて来る。」

「俳句は客観写生に始まり、中頃は主観との交錯が色々あって、それからまたしまいには客観描写に戻るという順序を履むのである。」

「感懐はどこまでも深く、どこまでも複雑であってよいのだが、それを現す事実はなるべく単純な、平明なものがよい。これが客観描写の極意である。」と述べています。

  

「俳句への道」を読み返して、 俳句の奥の深さ楽しさを再認識しました。  

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コメント

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「芭蕉俳句300句の英訳チャレンジ」
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木下 聰

(B)の「seems to be」は「to be」を省略して、
単に「seems」とするか、
すべて削除すると簡潔でもっと俳句らしくなるでしょう。

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