« 夏目漱石と高浜虚子 <漱石忌に思うこと> | メイン | 「初詣」の俳句 »

2016年12月26日 (月)

俳句の鑑賞 <「年忘れ」・「忘年会」の俳句>

              

年忘(としわすれ)は「忘年会」を意味する言葉です。「カラー図説日本大歳時記」によると、「年忘れ」は室町時代から使われているようです

日本大歳時記には芭蕉の俳句「人に家を買はせて我は年忘れ」が冒頭にあり、一茶の俳句「独り身や上野歩行(あるい)とし忘れ」など多数の例句が記載されています。一茶の俳句で「とし」と「ひらがな」を用いたのは、「年」と「歳」の二つのニュアンスを出すためでしょうか。芭蕉の俳句やがて死ぬけしきは見えず蝉の声」の「けしき」と同じような表現手法でしょう。(蝉の俳句を鑑賞しよう」参照。)

「年忘れ」の俳句をインターネットで検索すると、富安風生の面白い俳句があります。

・老いはいや死ぬこともいや年忘れ

この俳句は風生70歳の時に作った句です。「年忘れ」と漢字ですが、「自分が何歳か歳を忘れたい」というニュアンスも含ませた俳句でしょう。

風生は1979年(昭和54年)222日に93歳で亡くなっています。222日は高浜虚子の生誕の日です。風生は虚子に師事していました。虚子は「風生と死の話して涼しさよ」という俳句を作っています。運命の赤い糸」で結ばれているという言葉がありますが、虚子と風生の間に何か不思議な縁を感じます。

575筆まか勢」を見ると、「年忘れ」「忘年会」の俳句が無数にありますが、目についた例句をランダムに下記します。

・せつかれて年忘れする機嫌かな (松尾芭蕉)

年忘橙剥いて酒酌まん (正岡子規)

年忘れ老は淋しく笑まひをり (高浜虚子)

年忘れ最も老を忘れけり (富安風生)

・どろどろに酔うてしまひぬ年忘 日野草城

・とんとんと上る階段年忘れ 星野立子

・にぎやかに河豚食うて年忘れけり 森澄雄

・客あれば客あるで又年忘れ (高濱年尾

深大寺蕎麦にあづかる年忘 上田五千石

・義埋もまた楽しみもまた年忘 稲畑汀子)」

・厨にも味見の客や年忘 坊城中子    

ところで、俳句鑑賞・その八 高浜虚子」には「年忘れ老は淋しく笑まひけり」とあります。「笑まふ」は「にこにこ笑う」という意味です。「をり」は現在微笑んでいる状態を詠んだものであり、「けり」は過去のことを思いだして詠んだことになります。日本大歳時記には「をり」になっています。「けり」は誤記でしょうか? それとも、原句と推敲句があるのでしょうか?

文学者掃苔録」というサイトには風生の次の俳句などが掲載されています。「(そう)(たい)」とは広辞苑によると、「墓参り、特に盂蘭盆の墓参」のことで秋の季語です。

・死を怖れざりしはむかし老の春

・わが老をわがいとほしむ菊の前

・老木の芽をいそげるをあはれみぬ

   

花鳥」主催の坊城俊樹さんの「年忘れ・忘年会」の俳句がないか、インターネット検索をしていると、虚子の存問の俳句について「虚子への俳話 69」という俊樹さんのエッセイがありました。忘年会や新年会などの話題になると、チュヌの主人は句友の栄治さんが作った俳句「先輩はいつも先輩花見酒」を思いだします。「席順に気苦労したる忘年会」「相棒は愛犬チュヌよ年忘れ」「セクハラパワハラ憂ひ年忘れ」「句に興じブログに興じ煤籠り」などと浮かぶ駄句を口遊みながら、これも「存問の俳句ですよ」とささやかなブログを書いています。

余談ですが、「適量に注文し、乾杯後30分間とお開き前10分間は料理を楽しみ、食べ残しを減らす」という趣旨の「3010運動」が5年前に長野県松本市で始まり、全国各地に広まっているようです。

   

トラックバック

このページのトラックバックURL:
http://app.blog.enjoy.jp/t/trackback/655639/34021502

俳句の鑑賞 <「年忘れ」・「忘年会」の俳句>を参照しているブログ:

コメント

・気の合ひし句友と談義年忘れ (薫風士)

漫歩・万歩・SNSで楽しむ
「まんぽ俳句会」を始めました。

ご投稿をお待ちしています。
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/2019/11/post-d2ef-1.html
をご覧下さい。

(薫風士)

写真の愛犬「チュヌ」は10月16日に永眠しました。
「チュヌの便り」の総集編「チュヌの追悼」
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/2018/10/post-76ff.html
をご覧下さい。
チュヌは皆さんのお幸せを天国から見守っています。

「亀鳴くや声なき声を聞けよとて」
国際俳句交流協会俳句大会における
チュヌの主人の入選句(稲畑汀子選の特選)
に因んでエッセイを書きました。
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/2017/12/post-e4bd.html
をご覧下さい。

・年忘れ物忘れして余命知る (さとし)

同窓会や忘年会など人に会うと老いを痛感するこの頃です。
今朝のNHKの番組で「認知症」の問題をとりあげていました。
自分の物忘れが認知症の初期症状なのか、単なる加齢のものかよくわかりません。

15年間愛用したキャノンのプリンターがダメになったので、
新しいプリンター「PIXUS TS8030」を買いましたが、単純なミスが原因で年賀状の作成に悪戦苦闘しました。
パソコンは、Windows10にようやく慣れて、使いこなしているつもりですが、最新のプリンターを使いこなすのはこれからです。
マニュアルは高齢者には無用の色々便利な使用方法の解説が多く、印刷をしくじった時の対応など、物忘れの多い高齢者のための単純ミスに対する解説が見つかりません。
サービスセンターに電話しても、問い合わせが殺到し何時つながるのかわりません。
「印刷ストップ」ボタンを押せば一応の対応はできますが、その後の処理の仕方が分かりません。
原稿のデータは取り消されているようですが、残っているのか不安で新たな印刷をする度にテスト印刷をしています。
もっと使用者の立場からの「Q&A」を配慮してほしいですね。
マニュアルを読み返してもよくわかりませんので、対応方法を教えて頂けると有難いです。

コメントを投稿