高浜虚子の俳句と「護憲運動」のことなど
(2024.10.24 更新)
この写真は、NHK-TV 画面の一部分ですが、10月27日の衆議院選挙投票促進の広報車などです。
まやかしの無い公明正大な良識ある候補者を見極めて、投票しましょう。
時雨るるや叉もまやかし懲りもせず
(薫風士)
候補者が政治家として国民の信頼を裏切らないことを切望しています。
(2017.10.16の記事)
高浜虚子(1874–1959)の俳句に「年を以て巨人としたり歩み去る」とか「亀鳴くや皆愚かなる村のもの」という風変わりな俳句があります。
10月10日、衆議院選挙が公示されました。この高浜虚子の奇妙な俳句は「衆議院選挙」とか「護憲運動」などとは何ら関係ありませんが、「踏み込んでよく考えよう!」と、読者に謎を掛けているような気がします。
高浜虚子は「去年今年貫く棒の如きもの」という俳句も作っていますが、今年の年末年始はどんな感慨をもって過ごすことになるでしょうか。
目下、衆議院選挙の投票日(10月22日)に向けて各政党の代表者や候補者が支援を求めて運動に駆け回っていますが、将来に悔いを残さないように目先のことに捉われず、皆さんが投票してほしいものです。
(青色の文字をクリックすると関連の解説記事などをご覧になれます。)
チュヌの主人は「俳句を通じて世界平和を!」をモットーにして、ささやかなブログを書いていますが、その一環として、「高浜虚子の100句を読む」(坊城俊樹著)に掲載された虚子の100句を第1回から順次英訳して「チュヌの便り」に掲載中です。
「(第26回)高浜虚子の100句を読む」を見ると、掲句「年を以て」の作成が「大正十二年十二月二十一日」と記載されています。
「大正12年」(1923年)には関東大震災が発生しているので、そのことを俳句に詠んだものかと思いましたが、実際の作成年は大正2年(1913年)なので関東大震災とは無関係であることがわかりました。
ウイキペディアの大正2年の「できごと」を見ると、
2月に「尾崎行雄が政府弾劾演説を行う(第一次護憲運動)」「第3次桂内閣総辞職(大正政変)」、3月に「ウッドロウ・ウィルソンが第28代米大統領に就任」、「6月29日 - 第2次バルカン戦争勃発」、「11月22日-史上最後の征夷大将軍、徳川慶喜が、午前4時10分に、感冒にて死去。享年77(76歳0ヶ月25日)。」など、さまざまな出来事があります。
俳句においては主語がよく省略されますが、高浜虚子の上記の俳句「年を以て巨人としたり歩み去る」では「巨人としたり」や「歩み去る」の主体(主語)が省略されている、すなわち、「時の流れ」が省略されている、と解釈するのが良いと思います。
高浜虚子は、芭蕉の「奥の細道」の冒頭の言葉「月日は百代の過客にして、行き交ふ年もまた旅人なり」を踏まえてこの俳句を詠んだものでしょう。
「虚子にとっての大正二年は激動の一年であった。」と坊城俊樹氏が「高浜虚子の100句を読む」において述べているように、虚子はその年の暮の感慨を俳句に詠んだのでしょう。しかし、単に俳句のことや自分のことだけを念頭に詠んだのではなく、様々な出来事を念頭において、「大宇宙の運行」「時の流れ」「その年の出来事」などを読者に考えてほしいという思いから、このような大げさな表現にしたのかも知れません。
このような解釈をすると、「年を以て巨人としたり歩み去る」は次のように意訳することができます。
having made
a giant of year,
the time passes away
または、
having made the year
a giant,
the time passes away
さらに、次のように「歩み去る」を直訳すれば、原句の表現の面白さを生かせるでしょう。
having made the year
a giant,
the time walks away
なお、Terebess Asia Online (TAO)に掲句の英訳として次の翻訳が掲載されていますが、誤訳です。
Considering the years gone by
To be a giant
I walk away
上記の英訳では、「歩み去る」の主語は「I」、すなわち、「高浜虚子」自身であると解釈していますが、この俳句は虚子39歳の作ですからこの解釈は当てはまらず、見当違いの誤訳になるでしょう。
このような誤訳に基づいて外国の俳人や俳句に関心のある人々に高浜虚子の俳句の評価を云々されては困りますね。高浜虚子はあの世でさぞかし嘆いているのではないでしょうか?
俳句や政治問題に限らず、「何事においても、古い既成の権威に盲従することなく、一歩立ち止まり、自分でさらに踏み込んでよく考える必要がある」ということを痛感しています。
俳句談義(14):俳句の片言性と二面性(改訂版)のコメント欄で触れた埼玉県の女性の俳句(「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」)の「公民館だより」への掲載拒否問題について「さいたま地裁」の判決が出ました。
青色文字をタップすると、最新の「俳句(和文)」や「英語俳句」の記事をご覧頂けます。
2024.10.24 更新
投稿: | 2024年10月24日 (木) 12時21分
「新年・正月」の俳句特集
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/2015/12/post-8611.html
をご覧下さい。 (薫風士)
投稿: | 2023年1月 8日 (日) 09時29分
「俳句《涼し》死の話」
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/2022/07/post-70ee.html
や
「言葉の力《俳句は癒し》」
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/2022/07/post-ea4b.html
をご覧下さい。 (薫風士)
投稿: | 2022年7月 7日 (木) 16時22分
既成の医療体制の見直しや「デジタル田園都市国家構想」の実現を期待しています。
「年越やオミクロン株蔓延りて(医療の在り方)」
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/2022/01/post-ed54.html
や
「大晦日」「大年」の俳句(岸田内閣に望むこと)
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/2021/12/post-1143.html
「(冬の俳句特集)不意打ちのオミクロン株冬の雷」
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/2021/12/post-89b4.html
などをご一読下さい。
(薫風士)
投稿: | 2022年2月23日 (水) 13時57分
岸田文雄総理大臣には喫緊の課題が一段落すれば、「俳句を通じて世界平和を」という俳句愛好家の思いにも耳を傾けてほしいものです。
「渡月橋」etc.の俳句 (橋梁通信掲載に因んで)
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/2021/11/post-9ffc.html
をご覧下さい。
(薫風士)
投稿: | 2021年12月29日 (水) 11時08分
俳句 HAIKU: 俳句と川柳の鑑賞 <吾亦紅と総裁選> (enjoy.jp)
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/2021/09/post-e881.html
や
川柳と俳句(先輩の句集を拝読して思うこと)
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/2021/09/post-1e86.html
をご覧下さい。
(薫風士)
投稿: | 2021年9月22日 (水) 16時02分
「平和の俳句」啓蒙月間の提言
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/2021/09/post-153d.html
をご覧下さい。
(薫風士)
投稿: | 2021年9月 4日 (土) 20時47分
コロナ禍の俳句の鑑賞:「汗」
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/2021/06/post-ae3e.html
や
俳句の鑑賞:「昼寝」
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/2021/06/post-fe4e.html
をご一読下さい。
(薫風士)
投稿: | 2021年6月29日 (火) 16時06分
朝日新聞の記事「九条俳句、さいたま市が一転掲載へ」
https://www.asahi.com/articles/ASLDT5FQ4LDTUTNB00S.html
をご覧下さい。
投稿: 木下 聰 | 2019年4月 4日 (木) 08時21分
「亀鳴くや声なき声を聞けよとて」
貴方にとって「声なき声」とは何でしょうか?
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/2017/12/post-e4bd.html
をご覧下さい。
安倍政権やトランプ政権が賢明な政策を推進することを祈っています。
投稿: チュヌの主人 | 2017年12月 5日 (火) 17時50分
台風21号が近づいていますが、
大災害を起こさないことを祈っています。
明日(10月22日)の衆議院選挙の投票率にも
悪影響が無いと良いのですが・・・
俳句の鑑賞 <台風・野分>(改訂版)
http://knt73.blog.enjoy.jp/blog/2017/09/post-d1c3.html
をご覧下さい。
投稿: チュヌの主人(薫風士) | 2017年10月21日 (土) 09時48分