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2014年7月25日 (金)

俳句・HAIKU 言語の壁を破るチャレンジ(5)

英語のHAIKUを日本語の俳句に翻訳するのに、文語的にするか口語的にするかは原句の内容や翻訳者の好み次第である。しかし、一つの同じ句の中で文語と口語の両方を用いるのはよくない。

   

HIAの名句選に米国の Celia Stuart-Powles さん作の次のHAIKUと翻訳が掲載されていた。

Barely contained

in its thin velvet skin

- soft fragrant peach

熟れ桃やビロードの肌はちけそう

   

原句は「柔らかな香りのよい桃(soft fragrant peach)」を詠んだもので、その桃は「薄いビロード状の皮(thin velvet skin)」に「かろうじて包み込まれている(barely contained)」状態であるという意味であるが、直訳したのでは俳句にならない。

たとえば、文語的に翻訳するとすれば、

「ビロードの皮はじけむや熟れし桃」

となり、口語的に翻訳すれば、

ビロードの皮はじけそう桃熟れて」

などと、意訳することになる。

俳句として翻訳するには、原句に記述された「薄い」とか「柔らかな香りのよい」という形容語は全て割愛して「熟れし」の一語に集約して、読者の想像に委ねざるを得ないのである。HAIKUでは詳細な記述がなされていも、俳句では簡潔な記述にしなければならない。逆に、俳句をHAIKUに翻訳する場合は語句を補充して、英語のHAIKUとして分かりやすくする必要があることが多い。

このように、HAIKUと俳句の翻訳においては、言語間の障壁をいかに乗り越えるか、チャレンジすることに面白さがある。

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コメント

英語のHAIKUを翻訳するには日本語の俳句的表現力が大事である。伝統俳句的に文語にするか、或は現代俳句的に口語に翻訳するかは、原句の内容と翻訳者の好みによって変わる。俳句を英語のHAIKUに翻訳するには原句の解釈をどうするかが決め手になる。日本語は主語を省略することが多い。主体・客体が曖昧な表現になっている俳句の場合は二通りの解釈をして英訳せざるを得ないことがある。
英訳にしろ和訳にしろ英語の実力が左右することはいうまでもない。
俳句をHAIKUに翻訳して外国人に俳句の良さを理解して貰うことは至難の業であるが、地道な積み重ねをして行くより他に良い方法はないだろう。

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